夢物語が現実の目標に変わった日… 箱根駅伝予選会 同好会からはい上がった雑草ランナーが「惨敗」からつかんだ収穫:東京新聞 TOKYO Web

 新春に箱根路を駆け抜けるのは「夢物語」のはずだった。立命館大2年の尾上陽人おのうえ はると。関東勢で争う東京箱根間往復大学駅伝と無縁な関西の大学に進んだ上に、陸上部に入れる力もない平凡なランナーだった。あきらめず同好会で走り込み、入部を果たして1年後の今月14日、第100回記念で「全国化」された箱根駅伝の予選会に挑んだ。本戦出場は逃したが、学生トップレベルの走力を体感。「どこまで差を詰められるか、突き詰める」。その表情は自信に満ちあふれていた。(渡辺陽太郎)

会場で関東勢に交じりたなびく立命館大の旗

◆全国に門戸を広げると聞いて発奮

 箱根路を駆ける選手の多くは中学、高校で実績を残している。尾上は違う。中1で競技を始めたが、愛知県立旭野高時代は県大会にすら届かなかった。一般入試で進んだ立命大では陸上部への入部を希望したが、5000メートル15分20秒という基準を満たせず同好会に入った。

さらなる飛躍を誓う立命館大の尾上陽人

 専用の練習場がない中、自費で施設を借りたり自宅周辺を走ったりした。その頃、箱根駅伝を主催する関東学生陸上競技連盟が第100回大会の門戸を、全国の大学に広げると発表した。「挑戦したい」という気持ちを原動力に走る日々。昨年10月、15分7秒で入部基準を突破し、その後も記録を伸ばした。今月9日には大学三大駅伝の一つ、出雲全日本大学選抜で1区を任されるなど、今やチームに欠かせない戦力となっている。

◆関東勢の高い壁を体感できたことが財産

 その5日後、東京都内で行われた箱根駅伝の予選会。各校上位10人のハーフマラソンの合計タイムで競う。立命大は集団で声を掛け合ってゴールを目指した。多くの選手が自己記録に近いタイムを出すも、13位でギリギリ突破した山梨学院大から約26分遅れの34位。関東勢の高い壁に阻まれ、尾上は「惨敗です」。ただ「僕も多くの選手も力を出し切れた」と潔かった。

予選会の順位を伝える放送を聞く立命館大の選手たち。本戦出場を決めた大学に拍手を送った

 三大駅伝の中でも箱根は全10区間が20キロ超と長く、特別な対策が必要。立命大もトレーニングで走行距離を増やしてきた。予選突破はかなわなくても、努力の結晶は残る。「得意の長距離をさらに伸ばせた。他の駅伝でもトラックでもこの経験を生かしたい」と尾上は充実した表情だ。

 箱根駅伝が第101回以降、全国化されるかは分からない。だが「夢物語」の一端に触れた尾上は「箱根に出ていなくても強い選手はたくさんいる。自分が同好会からどこまではい上がっていけるかだ」とさらなる飛躍を誓った。



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