新春に箱根路を駆け抜けるのは「夢物語」のはずだった。立命館大2年の
◆全国に門戸を広げると聞いて発奮
箱根路を駆ける選手の多くは中学、高校で実績を残している。尾上は違う。中1で競技を始めたが、愛知県立旭野高時代は県大会にすら届かなかった。一般入試で進んだ立命大では陸上部への入部を希望したが、5000メートル15分20秒という基準を満たせず同好会に入った。
専用の練習場がない中、自費で施設を借りたり自宅周辺を走ったりした。その頃、箱根駅伝を主催する関東学生陸上競技連盟が第100回大会の門戸を、全国の大学に広げると発表した。「挑戦したい」という気持ちを原動力に走る日々。昨年10月、15分7秒で入部基準を突破し、その後も記録を伸ばした。今月9日には大学三大駅伝の一つ、出雲全日本大学選抜で1区を任されるなど、今やチームに欠かせない戦力となっている。
◆関東勢の高い壁を体感できたことが財産
その5日後、東京都内で行われた箱根駅伝の予選会。各校上位10人のハーフマラソンの合計タイムで競う。立命大は集団で声を掛け合ってゴールを目指した。多くの選手が自己記録に近いタイムを出すも、13位でギリギリ突破した山梨学院大から約26分遅れの34位。関東勢の高い壁に阻まれ、尾上は「惨敗です」。ただ「僕も多くの選手も力を出し切れた」と潔かった。
三大駅伝の中でも箱根は全10区間が20キロ超と長く、特別な対策が必要。立命大もトレーニングで走行距離を増やしてきた。予選突破はかなわなくても、努力の結晶は残る。「得意の長距離をさらに伸ばせた。他の駅伝でもトラックでもこの経験を生かしたい」と尾上は充実した表情だ。
箱根駅伝が第101回以降、全国化されるかは分からない。だが「夢物語」の一端に触れた尾上は「箱根に出ていなくても強い選手はたくさんいる。自分が同好会からどこまではい上がっていけるかだ」とさらなる飛躍を誓った。