連載①元付き人のレフェリー・和田京平さん(68)
リングを運ぶアルバイトの俺を、レフェリーとして見いだしてくれたのが馬場さんです。いろんなことを教わりました。一緒に食事してると、テーブルの下で脚が出てくる。洋食は皿を持って食っちゃいかん、アメリカ行ったら笑われるぞって。
今のプロレスはお客さんをトイレに行かせない。ポップコーンを食べさせないプロレスになった。ちょっと下を向いたら、技がひとつ決まっちゃう。レスラーは怖いんですよ、会場がシーンとするのが。だから、俺は若いレスラーに馬場さんのころの、じっくり見せる試合の話をするんです。京平に教えておけば伝えてくれるって思ってたんじゃないかな。だから俺をそばに置いてたんだろうね。馬場さんにはめられたんだよ。
◆先生であり父、プロレスの魅せ方から洋食マナーまで教わった
映像を今見ても、一番うまいのは馬場さんです。すごい。還暦記念試合で、チョップを浴びた馬場さんがじだんだ踏んでね。それを見てお客さんがわくんですよ。ああいうのは今のレスラーはできない。相手を足で踏みつけて3カウントを要求するレスラーがいるけれど、「相手を起こしてあげるくらいの器量を持て、やられた選手の気持ちになれ」なんてことも言ってました。
馬場さんが亡くなった日は、夕日がきれいでね。暗くなってから車に乗せて、病院から自宅マンションに運んだ。部屋は8階なんだけど、エレベーターに入らないんですよ。立てることもできない。階段で行くことになって、俺も運んだんだけど、重くて3回落としました。「社長、勘弁してください、勘弁してください」って。
俺はもう馬場さんの年齢を越しちゃった。馬場さんの言う通りだなぁって思うことがよくありますよ。馬場さんが何かの袋を開けるのに時間がかかったりして、俺がやろうとすると、「ばか野郎、俺のリハビリなんだ。おまえも年取りゃ分かる」って。それを今、俺が若いレスラーに言ってます。「おまえも年取りゃ分かる」って。馬場さんは先生であり、お父さんでした。うちの親より長く付き合ったんだから。(聞き手・大西洋和)
◇
<連載:ジャイアント馬場が残したもの~逝去から四半世紀>
日本プロレス界の巨星・ジャイアント馬場さんが亡くなり来年1月で四半世紀を迎える。今もファンから愛される馬場さんがプロレス界や社会に残したものを、ゆかりの5人に聞いた。
◆自伝を復刊、全国の書店で販売中
ジャイアント馬場さんの貴重な肉声を収めた自伝を復刊し、馬場さんをよく知る和田京平さんのインタビューと時代状況がわかる序章も加えた「ジャイアント馬場 16文キックの伝説」を、全国の書店で販売中。定価1650円(税込み)、240ページ、四六判。