「親として」転校させたくない FA宣言の西武・平井:東京新聞 TOKYO Web

 プロ野球選手も一人の生活者なのだな。思えば当たり前のことを感じたのは9日、国内フリーエージェント(FA)権の行使を発表した西武の平井克典投手の話を聞いた時だ。「家族優先で考えたい。家をどこに買うかとか、息子の学校とか」。時に桁違いの金額も話題になる中で、妙に親近感が湧くFA宣言だった。

 

FA宣言の理由を説明する西武の平井=ベルーナドームで

 

 FA権は日本野球機構(NPB)が定める一定の期間、1軍登録された選手が取得できる。14日に申請が締め切られ、15日に7人がコミッショナー公示された。国内FA権はNPB所属のどの球団とも契約交渉可能で、年俸や契約年数など、よりよい条件を求めて「他球団の話も聞いてみたい」というケースが多い。楽天の松井裕樹投手は海外FA権を使って米大リーグ移籍を目指す。

 平井は今の環境に不満を抱いているわけではないが、FA宣言してまで解消したい「もやもやした気持ち」があるという。「ライオンズさんのお話を聞きたいし、僕も相談したい。そのためにもうちょっと時間をくださいという感覚の宣言です」。愛知県出身の31歳は2016年のドラフト5位で社会人ホンダ鈴鹿から入団。19年にパ・リーグ最多記録の81試合に登板し、今季は中継ぎとしてチーム最多の試合登板で4勝3敗28ホールド、防御率2・55の成績を残した。タフネス右腕の獲得に関心を寄せる球団もありそうだが、本人は西武残留が基本線で他球団との交渉や移籍を「あんまり考えていない」という。

金銭など条件面の希望もあるだろうが、強調したのは家族のことだった。就学前の息子は友達ができて楽しそうにしているといい、「早いところ永住先を決めてあげたい、転校は避けてあげたいというのが親としての正直な気持ち」。できるだけ環境を変えず、家族が一緒にいられるようにという思いは、転勤がある記者もよく分かる。

 30代後半、まして40歳を過ぎて現役を続けられる選手は一握り。引退後のキャリアを見通すのも簡単ではない。浮世離れして見えるプロスポーツの世界だが、働き方や身近な人生設計に頭を悩ます姿は多くの人にとっても身につまされるのではないだろうか。

 FA宣言した選手は16日から所属球団を含む各球団と交渉できる。平井家の理想をかなえるため、どのような条件を求めるのか詳細は明かさなかったが、来季すっきりした表情でマウンドに上がっていれば何よりだ。(井上仁)



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